スマホゲームユーザーとゲーム専用機ユーザーはどれくらい 重複している?
みなさん、「ゲーム」というとどのようなものをイメージされるでしょうか? CESA(一般社団法人 コンピュータエンターテインメント協会)が発行している『CESA白書』によれば、「ゲーム」とは「元来は“勝敗を決める”“優劣を争う”あるいは“あらかじめ設定した目標の達成を目指す”などといった“一定のルール”を伴う遊戯全般を指すもの」と定義づけられているようです。ですから、広義の意味における「ゲーム」には「トランプ」や「ボードゲーム」といったようなものも全て含まれると言えます。
しかし、現実にはその時々(ときどき)の世相や流行、社会情勢などを色濃く反映しているのではないでしょうか。そういった意味では、1983年(昭和58年)のファミリーコンピュータ(ファミコン)登場以来、長い間「ゲーム」とは事実上いわゆる「家庭用ゲーム」、つまりゲーム専用機の代名詞だったと言っても過言ではないように思います。
それが、ここ数年のスマホゲーム市場の急拡大によってその勢力図に大きな変化が起きています。前述の『CESA白書』によれば、昨年(2015年)のスマートデバイスゲームアプリ市場規模は9,453億円と1兆円に迫る規模にまで拡大しているということです。それに対し、ゲーム専用機の市場規模はソフトウェアだけだと1,949億円、ハードウェアの1,353億円を合わせても3,302億円ということで、スマートデバイスの3分の1以下という状況です。こういった市場環境は国内と欧米では全く異なり、欧米ではいまだに家庭用ゲーム機の方が大きな市場規模を持っているようですが、このあたりのことは、先日当社(ゲームエイジ総研)がJOGA(一般社団法人日本オンラインゲーム協会)の主催で開催したマーケティングセミナーでも詳しくご紹介してありますので、よろしければご一読下さい。
つまり、現在の国内マーケットにおいて「ゲーム」とは必ずしも「家庭用ゲーム」を指すものではなくなりつつあると言えるのではないでしょうか? 市場規模の面から見れば、現在は明らかにスマホゲームの方が主流です。ゲームユーザー、特に若い世代の方々の中には「ゲーム」と聞くと「家庭用ゲーム」ではなく「スマホゲーム」を思い浮かべる人も増えてきているのではないでしょうか? さらに言えば、この「家庭用ゲーム」という呼称ももはや専売特許とは言えず、「ゲーム専用機」と呼ぶべきなのかも知れません。
ところで、これらの「スマホゲーム」と「ゲーム専用機」のユーザーはどれくらい重複していて、かつそれぞれのユーザー群にはどういった特徴があるのでしょうか? 今回は、当社が毎月発行しているゲームマーケットに関するレポート『Monthlyゲーム・トレンド・レイティング』からいくつかデータをご紹介したいと思います。
[図1]は、2014年1月から2016年6月までの「ゲーム専用機」「スマートフォン」のそれぞれの月間アクティブゲームユーザー数(調査対象月内に何らかのデバイスで1回以上ゲームをプレイしたユーザー数)をまとめたものです。これによると、2014年1月時点では両者のゲームユーザー数はほぼ拮抗していました。その直後の2014年3月に、初めてスマホゲームユーザー数がゲーム専用機のユーザー数を逆転、その後両者の差は広がるばかりでした。ゲーム専用機は2014年1月時点では1,359万人の月間アクティブユーザー数が存在していたのが、今年6月にはそれが924万人にまで減少しています。この2年半の間に実に435万人、3割以上も減少したことになります。一方のスマートフォンは、2014年1月の1,351万人から、今年6月には2,451万人と、2年半の間に1,100万人も増加、約1.8倍の規模にまで拡大しています。ただ、そのスマートフォンも今年の前半には一時的な拡大はあったものの、その後はやや縮小、2014年から2015年にかけての急拡大のような局面は終わり、現在は基本的に2,400-2,500万人くらいがスマホの月間アクティブゲームユーザー数であると見てよさそうです。
次に、[図2]は今年6月のゲーム専用機とスマートフォンの月間アクティブユーザーの重複状況をまとめたベン図です。ゲーム専用機ユーザー924万人のうち、スマホでもゲームをプレイしているユーザーは563万人、これはゲーム専用機ユーザー全体の61%に当たります。一方、これはスマホゲームユーザー2,451万人のうち23%を占めています。まとめると、ゲーム専用機ユーザーの5人に3人、スマホゲームユーザーの4人に1人は、ゲーム専用機でもスマートフォンでも並行してゲームを楽しんでいるという状況です。
では、これらのそれぞれのユーザー群にはどのような特徴があるのでしょうか。[図3]は、[ゲーム専用機のみでプレイ][(ゲーム専用機/スマホの)両方でプレイ][スマホのみでプレイ]の構成比をセグメント別にまとめたものです。こちらのグラフも今年6月の月間アクティブゲームユーザーのデータを元に作図しています。集計軸としたのは[性年齢別(5歳刻み)]と[IPS別][MBS別]の3つです。IPS(Innovative Power Segment)とは、当社(ゲームエイジ総研)がゲーム専用機のユーザークラスタリングに使用しているセグメンテーション指標です。基本的に[イノベータ]はいわゆるコアユーザー、[マジョリティ]はライトユーザーと捉えて頂いて差し支えありません。詳しくは当社のHPでもご説明してあるのでご参照ください。同じように、MBS(Mobile Behavior Segment)はスマートデバイスゲームユーザーのユーザークラスタリング用に当社が使用しているセグメンテーション指標です。こちらの指標はこのZoomAppでも使っておりますし、ZoomApp内でも詳しくご説明していますのでそちらも是非ご参照ください。
これを見て気づくのは、まず男性の方が女性に比べて[ゲーム専用機のみプレイ]と[両方でプレイ]の比率が全体的に高いことです。つまり、ゲーム専用機については明らかに男性傾向が強く出ています。
次に、年齢別では、男女ともに10代前半(10-14歳)だけは[ゲーム専用機のみプレイ]の比率が突出して高いことに気づきます。ここから言えることは、スマートフォンでゲームをする人が多くなるのは高校生になってからであるということです。また、もうひとつ分かることは、その高校生以上(15歳以上)の年代において、[ゲーム専用機のみプレイ]の比率は各年代でさほど大きな違いがないのに対して、[両方でプレイ]については明らかに若年ユーザーほど比率が高くなっていることです。
そして、サイコグラフィック属性であるIPS別、MBS別の分布を見ると、どちらもコアユーザー(IPSではイノベータ、MBSではエクストリームゲーマー)ほど[両方でプレイ]の比率が明らかに高くなっています。つまり、ゲームに造詣が深い人ほどゲーム専用機、スマートフォンのいずれでもゲームをプレイする傾向が強くなると言えます。おそらく、外出先や移動中ではスマートフォン、自宅ではゲーム専用機というように、その時々の場所やシーンによってうまく使い分けているのではないでしょうか。
このように、ゲームユーザー全体を一定の基準で分類(セグメンテーション)し、それらを定量的に把握するとともに、性別、年齢別といったデモグラフィック属性やIPS、MBSといったサイコグラフィック属性の両面で捉えることで、それぞれのユーザークラスタのより深いインサイトが得られます。今後も、このコーナーを通じて、みなさんに有益なデータをご紹介してまいりたいと思います。
(文:池田 敬人)